近年、社会の進化と共に新たな概念や思想が台頭しています。
その中で注目されているのが「反出生主義」です。
この思想は、伝統的な人口増加への価値観に疑問を投げかけ、人間が積極的に出生を制限する立場を取るものです。
本記事では、反出生主義の基本的な概念や背景、論点について探っていきます。
反出生主義とは?
反出生主義とは、生殖の倫理性を問う考え方です。
この種の考え方は、昔から世界中の哲学・宗教・文学において、繰り返し説かれてきました。
反出生主義の根底には、生まれてくる人間の苦しみを軽減するという考え方があります。
人間は生まれてから死ぬまで、様々な苦しみに直面します。
肉体的苦痛、精神的苦痛、そして死の恐怖などです。
これらの苦しみは、生殖によって新たな存在をもたらすことで、新たな人間にも引き継がれることになります。
したがって、反出生主義者は生殖の際には、生まれてくる人間の苦しみを慎重に考慮すべきだと主張しています。
反出生主義の読み方
反出生主義は、「はんしゅっしょうしゅぎ」と読みます。
- 「反」は「逆の」「対立する」という意味
- 「出生」は「生まれること」という意味
- 「主義」は「考え方」という意味
つまり、「反出生主義」は「生まれることに対して反対する考え方」という意味になります。
「はんしゅっせいしゅぎ」と読む場合もありますが、統一されていないようです。
反出生主義は英語で何というか?
日本語の「反出生主義」は英語で「antinatalism」と書きます。
- 「anti」は「反対の」という意味
- 「natal」は「出産の」という意味
つまり、反出生主義とは「出産に反対する考え」という意味になります。
対義語は出生主義
出生主義とは、人間の存在は価値があるため、生殖を奨励すべきとする思想です。
したがって、反出生主義の対義語である出生主義は、人間の存在は価値があるため、生殖を控えるのではなくむしろ奨励すべきであるとする思想です。
出生主義の具体的な考え方としては、以下のようなものが挙げられます。
- 人間は、苦しみを経験しながらも、喜びや幸福も経験できる存在である。
- 人間は、社会や世界に貢献できる存在である。
- 人間は、子孫を残すことで、種の存続に貢献できる存在である。
このように、出生主義は人間の存在にはさまざまな価値があり、生殖によってその価値を実現すべきであるという考え方です。
反出生主義の起源
この考え方の起源は、「人間の苦しみを軽減したい」という考え方に由来し、古代ギリシャの哲学者たちにまで遡ることができます。
シニシズムやストア派の哲学者たちは、欲望や執着を捨てることで苦しみから逃れることができると考え、子供を産まないことを推奨していました。
19世紀のドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアーは、人間の存在は苦しみの連続であると主張し、子供を産むことはその子を苦しみの世界に送り込むことになると主張しました。
このように、反出生主義は古代から現代に至るまで、さまざまな思想家によって唱えられている思想です。
反出生主義の割合
反出生主義の割合についてですが、調べた限りでは統計が見つからなかったので、不明となります。
しかし、日本の若者の間では急増しているという情報もあり、現実的に日本の出生率は下降傾向です。
日本の若者の間で急増している件については、以下の記事を参照下さい。

反出生主義の種類
反出生主義にはさまざまな考え方がありますが、大きく分けて2つの種類があります。
誕生否定
これは、自分自身や他人が、苦しみや不幸を経験する可能性を否定する思想です。
誕生の否定を唱える反出生主義者は、人間は苦しみや不幸を経験する存在であると考えています。
そのため、自分自身や他人が苦しみや不幸を経験する可能性を否定するために、自分自身や他人が生まれてこないほうがよいと考えるわけです。
出産否定
これは、自分自身や他人が、苦しみや不幸を経験する可能性を減らすことができると考える思想です。
出産の否定を唱える反出生主義者は、人間は素晴らしい存在であり、幸福を享受することができる存在であると考えています。
しかし、彼らは人間が幸福を享受するためには、苦しみや不幸を経験する必要があると考えています。
そのため、苦しみや不幸を経験する可能性のある人間を生み出すことは、その人間にとって不幸なことであると考えるわけです。
反出生主義の考え方
反出生主義の考え方は、大きく分けて2つあります。
生は苦痛である
反出生主義者は、人生は苦痛であると考えています。
人生には、病気、老衰、死などの苦しみが伴うからです。
また、人間関係の悩みや社会的な不条理など、さまざまな苦しみが存在します。
生は必然ではない
反出生主義者は、生は必然ではないと考えています。
人間は、意志によって生殖を選択することができます。
したがって、苦痛を伴う生を避けるために、生殖を控えることは可能であるということです。
反出生主義の論理
反出生主義の論理は、大きく分けて以下の3つの論点に基づいています。
苦痛と快楽の非対称性
反出生主義者は、苦痛と快楽は非対称であると考えます。
つまり、
- 快楽
- 苦痛よりも頻度は少ない
- 短い期間しか経験できない
- 苦痛
- 快楽よりも長い期間
- 高い頻度で経験される
ということです。
このことから、新たな存在を創造することはその存在に苦痛を強いるリスクを伴うが、快楽を提供するメリットは少ないと主張します。
苦痛は存在しないよりも存在する方が悪い
苦痛は存在しないよりも存在する方が悪いという、いわゆる「苦痛と快楽の非対称性」に基づいています。
この考えによれば、苦痛は存在しない状態よりも、存在する状態の方が価値的に劣ります。
例えば、100円の価値があるものを失うよりも100円をもらう方が良いのと同じように、苦痛を経験するよりも苦痛を経験しない状態の方が良いのです。
存在の不均衡
苦痛と快楽の非対称性に加えて、反出生主義は存在の不均衡も指摘します。
すなわち、苦痛を経験する可能性のある存在を誕生させることで、その存在に苦痛を強いる一方で、その存在が快楽を経験する可能性は保証されていないという点です。
反出生主義の代表的な論者(哲学者)
反出生主義の代表的な論者としては、以下のような人たちが挙げられます。
- アルトゥル・ショーペンハウアー(1788-1860)ドイツの哲学者。
- エミール・シオラン(1911-1995)ルーマニアの哲学者。
- デイヴィッド・ベネター(1966-)南アフリカ出身の哲学者。
反出生主義の有名人や芸能人
一部の哲学者を除き、日本の芸能界で反出生主義を公言している人は、現時点では確認されていないようです。
反出生主義への批判や反論
反出生主義に対しては、さまざまな批判がされています。
その主な批判は、以下のとおりです。
悲観主義に基づいている
反出生主義は、人間の人生は基本的に苦しみや不幸に満ちているという悲観的な見方に立っています。
しかし、人生には苦しみや不幸だけでなく、喜びや幸せも存在します。
また、人生の意味や価値は、個人によって異なるものです。
そのため、人生は必ずしも苦しみや不幸に満ちているわけではないという批判があります。
個人の自由を侵害する
反出生主義は、すべての人間の出生を倫理的に否定しています。
しかし、子供を産むかどうかは、個人の自由に委ねられるべきという批判があります。
反出生主義は、個人の自由を侵害する可能性があるという指摘です。
反出生主義は社会を停滞させる
反出生主義は、社会の存続に必要な人口増加を阻害するものであると主張します。
人口減少は、社会の経済や文化にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があると批判されています。
実現不可能である
反出生主義を実現するためには、すべての人間が子どもを産むことをやめなければなりません。
しかし、これは現実的に不可能であるという批判もあります。
反出生主義者のタイプ
ひとくちに反出生主義と言っても、いろんなタイプがいます。
- 厳格タイプ
- 緩やかタイプ
- 個人的タイプ
- 悲観的タイプ
- 楽観的タイプ
- 懐疑的タイプ
- 苦痛軽減タイプ
それでは一つずつ解説していきます。
厳格なタイプ
厳格タイプは、すべての人間の誕生は悪であり、人類は絶滅すべきだと考えるタイプです。
このタイプは、人生には必ず苦しみが伴うため、その苦しみを他人に強いるべきではないと主張します。
また、地球環境の悪化や人口過多などの問題も、人類絶滅によって解決できると考えています。
緩やかタイプ
緩やかタイプは、すべての人間の誕生は悪ではないが、生殖には慎重であるべきだと考えるタイプです。
このタイプは、人生には苦しみと喜びの両方があるため、そのバランスを考えて生殖をすべきだと主張します。
また、地球環境の悪化や人口過多などの問題も、人類絶滅ではなく人口減少によって解決できると考えています。
個人的タイプ
個人的タイプは、自分自身は反出生主義者だが、他人の生殖を否定しないタイプです。
このタイプは、人生の価値は個人の判断に委ねられるべきであり、他人の人生を自分の価値観で決めつけるべきではないと考えています。
また、人類絶滅や人口減少についても、個人の意思に委ねるべきだと考えています。
悲観的タイプ
悲観的タイプは、人生は苦痛と不幸が支配されており、生まれてくることはそれ自体が不幸であるという考え方をします。
彼らは人生の苦痛や不幸を完全になくすことは不可能であると考えているため、生殖を控えて、新たな苦しみを生み出す可能性を減らすことが重要であると主張します。
楽観的タイプ
楽観的タイプは、人生には喜びや幸福も存在するが、それらは苦痛や不幸に比べて相対的に少ないという考え方をします。
彼らは人生の苦痛や不幸を完全になくすことは不可能であるため、生殖を控えて、新たな苦しみを生み出す可能性を減らすことが重要であると主張します。
懐疑的タイプ
懐疑的タイプは、人生の苦痛や不幸の程度や生殖の是非について、明確な判断を下すことができないという考え方をします。
彼らは人生の苦痛や不幸の程度については、個人の価値観や経験によって異なると考えているため、生殖の是非については個人の判断に委ねるべきであると主張します。
苦痛軽減タイプ
苦痛軽減タイプは、人生には必ず苦痛が伴うという考えに基づいており、苦痛を経験させないために人は生まれるべきではないと主張します。
彼らは人生には喜びや幸せもあるが、それらは苦痛に比べて相対的に小さく、苦痛を経験する可能性の方が大きいと考えています。
そのため、苦痛を経験する可能性をゼロにするために、人は生まれるべきではないと主張します。
Twitterの反出生主義に関する意見やエピソードのまとめ
ここでは、Twitterから引用した反出生主義に関する意見やエピソードをご紹介します。
思想は否定しないけど押し付けたり布教しないで欲しい
反出生主義という概念を知って世の中には色んな人がおるなあとまたひとつ賢くなった。
— きの子🍄 (@uranozakinokoa) January 8, 2024
そういう思想を持つことを否定はしないけど、その思想を押し付けたり布教したり、他人の家の子供を見て『親のエゴ』だなんて失礼な言葉を言うような人間にはなりたくないね。
反出生主義になった人も苦しみぬいてなった過程があるかもしれないしその思想を持っていることは尊重するけど、他人の出産に酷いことを言ったり親子を叩いたりするのは嫌悪感。
— ねこにゃん (@d_gvtr) January 8, 2024
その逆に強めの出産賛美の人が産まない選択をした女性に男並に働いて社会の役に立てと強制するのもなんか気持ち悪い。
これはどんな思想にも共通することですが、ヴィーガンなども同じように言われることが多いですね。
カルト思想だと思っている
反出生主義とかいうあたおかカルト思想が蔓延して出生率改善の足引っ張るのだけはやめて欲しいわ https://t.co/0ZbSCZulIV
— ば ぶ ち ゃ ん (@hz6m3PUl7S78018) January 8, 2024
これは先ほどとは違い、全く理解できないという人です。
主義や思想という時点で、理解できないという人も多そうです。
子供を産みたくない=反出生主義ではない
子供産みたくないと言うと反出生主義だと思われるかもしれないが、違います。
— 灯台守 (@midori_____iro) January 8, 2024
私は絶対に子どもは要らないが、昔は家庭をつくることに憧れてたし、今も子どもが欲しい人や子育てしている人を基本的には尊重して応援はしていて、それがおかしいだなんて少しも思わない。反出生主義でもない。自分と関わる子どもには将来少しでも幸せになって欲しいと尽くしているし可愛がっている。
— めるのわちゃん (@iwantsoy) January 7, 2024
子供を産みたくない理由は色々あると思うので、反出生主義者とは限らないようです。
ちなみに私も子供はいらないと思っていますが、反出生主義ではありません。
国に絶望してるから理解できるし賛同できる
こんな国で生きてて楽しくも嬉しくもないから自分自身としても生きてたくないし、この先産まれてくるであろう子供も可哀想やなと思うので反出生主義は理解出来るし賛同出来る
— あああ (@kei___0990) January 7, 2024
国がしっかりしていれば、こういった思想を持つ人は少なくなるのかも知れませんね。
自分は子供いらなくて恋人は子供欲しいってどうしたらいいの?こんな世の中で子供産みたいって思う人すごいんだけど
— なむ (@TeNOalUEqZ79866) January 7, 2024
#反出生主義
おみくじで例え話
反出生主義じゃないけどさ、おみくじで凶が出た時の悲しみを避けるためにはおみくじを引かないことは1番幸せなのではと思っている
— せいや (@seiyabeats) January 6, 2024
これは「なるほど・・・」と思いましたね。
反出生主義の現状
反出生主義は、主流の思想とは言えず、むしろ少数派の思想です。
その背景には、地球規模の環境問題や、少子高齢化、経済格差、戦争などの社会問題が挙げられます。
反出生主義は、生殖の倫理性や、人間の存在意義に関する根本的な問いを提起する思想です。
反出生主義の今後
反出生主義は、近年インターネットやSNSの普及により、その認知度が高まっています。
しかし、その倫理的な根拠や現実的妥当性については、依然として議論が続いています。
今後、反出生主義がどのような影響を与えていくのかは未知数です。
しかし、反出生主義が人々の考え方に影響を与える可能性は十分にあり、その動向には注目が必要です。
まとめ:反出生主義とは、人間の誕生や出産を否定する思想
反出生主義は、生殖を非倫理的と位置づける考え方です。
反出生主義は、その倫理的な根拠や現実的妥当性についてさまざまな批判を受けていますが、近年その認知度が高まっています。
今後、反出生主義がどのような影響を与えていくのかは未知数ですが、その動向には注目が必要です。
以上になります。
